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ブランドの価値を高めるコンセプト論

DATE . 2024.09.20

UPDATE DATE . 2024.11.15

Category : ブランディング / マーケティング

Nakamura Hiroki
ジャーナルを書いた人Nakamura Hiroki

Creative Director

1981年生まれ|ブランドマネージャー1級/インターナルブランディング 認定コンサルタント プラクティショナー/WEBマーケティング検定/ネットショップ販売士/WEBデザイン技能士

ブランドの価値を高めるコンセプト論

「コンセプトが重要」とはよく耳にするものの、具体的に何がどう大事なのか、意外と曖昧に感じる方も多いと思う。しかし、ブランドや商品・サービスの開発において、コンセプトが成功の鍵を握っていることは間違いない。
今回の記事では、ブランド力を高めるクリエイティブ/ブランディングディレクションにおいて、なぜコンセプトが欠かせないのか、その理由について詳しく書いていきます。

コンセプトとは何なのか?

コンセプトについてGoogleで調べてみると「概念」だとか「考え方」といった意味が出てきます。ただ全く腑に落ちないので自分なりの定義を見つけることにしました。僕がブランディング支援をする際に必ず説明しているコンセプトの定義が、「ブランド戦略に基づいた思考の出発点、またはすべての構成要素を貫く指針」です。

人で言えば「背骨」のようなものだと僕は思っています。このコンセプトがなかった場合、何が起こるのかというと、そもそもディレクションができません。つまり物事を前に推し進めることができず、チームマネジメントもできなければ、ブランディングもできず、もちろんデザインもできません。思考の行き場を失うからです。

なので僕のようなブランディングディレクターの仕事は、コンセプトをつくる、落とし込む、問い直す、磨き続ける。基本的に、これを日々繰り返しています。

コンセプト開発前は、暇さえあれば、街に出かけて情報収集しコンセプト開発のヒントにする。課題の解決につながるか、ニーズや戦略に基づいているかを問い直す。より想像しやすく見える言葉に磨いていく。

コンセプト開発後も、クライアントと商品やサービスの価値を深めるディスカッションを行う際には、まずコンセプトに立ち返ります。デザイナーから提案されたデザインを確認する際も、最初にコンセプトに沿っているかを確認します。さらに、SNSやプレスリリースなどの情報発信を行う際も、コンセプトを基に進めていくのが基本です。

寝る前も、起きた直後も、時には夢の中までも、その時担当しているブランドのコンセプトと常に一緒に過ごしているようなイメージです。
全てのディテールはその後で入念に確認しています。

人を惹きつけるコンセプトの特徴

コンセプトをもう少し具体的に掘り下げていきます。下記はコンセプトを提案する前に最低限のチェックしている項目です。

●顧客のニーズ/インサイト→顧客から求められている内容か?
●自社の強み(USP)→自信を持って提供できる価値か?
●社会的意義やビジョン→意志に沿っているか?
●誰が聞いても分かりやすいか?

総じて、「真実と発見」が存在することが良いコンセプトの必須条件です。つまり、偽りや価値の再定義が存在しなければ、コンセプトを作っても機能しないのであまり意味がありません。

加えて、コンセプトにはさまざまな考え方があると思いますが、個人的には「戦略のないコンセプトはコンセプトではない」と思っています。価値観をそのまま言葉にしていたり、テーマ(お題)をそのままコンセプトにしているケースが多くのところで見られます。

「夢と魔法の国」「サードプレイス」「会いに行けるアイドル」は、よくコンセプトの好事例として挙げられます。これらはすべて、先ほどの4つのチェックポイントに当てはまり、戦略もしっかりと練り込まれています。そして、その結果、多くの人から愛されるブランドとして確立されています。

それぞれの本質を捉え、重なるところを可視化する

つまり、ブランド開発・育成を担うクリエイターは、先ほどあげたの3つの要素の本質とそれぞれが重なり合うポイント、接点(=コンセプト)を捉え、言語化、可視化していく技術が求められます。

●顧客のニーズ/インサイト→顧客から求められている内容か?
●自社の強み(USP)→自信を持って提供できる価値か?
●社会的意義やビジョン→意志に沿っているか?

それこそがブランディングデザインであり、コンセプトの言語化はこうした意味づくりの始まりなのです。

それぞれの価値を、一つのまとまりとして示す力

ここからはコンセプトをどう現実の体験に落とし込むのかについて。
とても分かりやすいのがスターバックスです。スターバックスのブランドコンセプトは「サードプレイス」(自宅でも職場でもない第3の居場所)。実際にスターバックスを訪れると、この「サードプレイス」というコンセプトに納得せざるを得ないほど、体験とコンセプトが一致している。この一貫した体験が実現できているのは、「サードプレイス」という大きなコンセプトに加えて、より具体的な小さなコンセプトも存在しているからだと思っています。たとえば接客、香り、音楽などに至るまで、すべてが「何を指針としているのか」を言語化されているはずです。これらがなければ、あれほどの一貫性は生み出せない。

たとえば、接客においては、フレンドリーでありながら、決して馴れ馴れしくない対応。音楽は、ジャンルを広く取り入れながらも、リラックスできるよう穏やかな曲調でまとめる。香りは、タバコを排除し、コーヒーの香りが漂う空間を作り出すなど。それぞれが具体的なコンセプトに基づいて運用されていると考えられる。

現代のようにモノやサービスが溢れる時代においては、このようにあらゆる物事に「意味」を持たせ、その一つひとつを線で繋ぎ、「群」としての価値を生み出すことが求められています。
ここで重要なのが、心理学的なフレーミング効果です。フレーミング効果とは、情報がどのように提示されるかによって、人々の認知や判断が変わる現象を指します。コンセプトが明確で一貫していることで、顧客はそのフレームの中で商品やサービスを受け取りやすくなり、結果としてブランドの認知や価値が一貫して伝わるのです。

ブランドコンセプトから具体的なタッチポイントにおける要素のコンセプトまでを徹底的に言語化し、すべての要素をつなげていく。そうして初めて、ブランドは独自の世界観を作り出し、それが選ばれる理由になるのです。言い換えれば、抽象から具体まであらゆる場面でのコンセプト化は、ブランド価値を最大限に引き出すための鍵なのです。

チーム全体の行動指針にも派生する

コンセプトを言語化することは、ブランドや商品だけでなく、チームにも良い影響を与えます。たとえば、チーム内で「もっとお客様に丁寧な対応を」と伝える際、その「丁寧」の解釈は人それぞれです。高級ホテルのようにスマートな対応を思い浮かべる人もいれば、親しい友人のように親しみを込めた対応を想像する人もいるでしょう。ここで曖昧なイメージを排除し、共通の認識を持つためにコンセプトが重要になります。

「丁寧な対応」とは何かを、具体的にコンセプトとして言語化することで、判断基準が明確になり、チームの誰もが同じ方向を向いて行動できるようになります。これまで「暗黙知」として共有されていたものを、「形式知」としてコンセプトに落とし込むことで、どんなイレギュラーな状況においても対応がスムーズになります。

あらゆる場面でコンセプトを言語化する

ブランドコンセプトに始まり、デザインコンセプト、採用コンセプト、接客コンセプト、チームコンセプト、オウンドメディア運用コンセプト…こうしたコンセプトは、外に発信するかどうかにかかわらず、あらゆるコミュニケーションシーンで言語化しておくべきです。この記事自体も、コンセプトを定めて執筆を始めました。結局のところ、伝わるコミュニケーションの共通点は、「誰に・何を・どのように」を明確にすること。
あらゆるコミュニケーション、それぞれの要素や価値の関係性を滑らかにし、価値を引き上げていくのがコンセプトの力なのです。

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