
住宅に強いブランディング会社と、一般のデザイン会社は何が違うのか
住宅会社のホームページやパンフレットをお願いしようとすると、いくつかの選択肢が出てきます。地元のデザイン会社。実績の多い制作会社。そして、住宅に特化していますと書いてある会社。
見積もりを並べても、違いは分かりにくいと思います。作るものは同じホームページで、金額もそこまで離れていない。何が違うんですか、と聞かれることが、たびたびあります。
私は住宅会社で働いていたことはありません。ブランドづくりをお手伝いしてきた立場です。そのうえで、住宅の仕事は、ほかの業種と前提がはっきり違うと感じています。今日はその違いを3つ書いてみます。
1. 検討期間が長い。だから「一回で決めさせる」設計にならない
多くの商品は、見て比べて、その場で決めます。ホームページの役割も、来た人にその場で申し込んでもらうことになります。
住宅は違います。土地を探しはじめてから契約まで、一年、二年とかかることも、珍しくありません。その間、お施主様は何社も見て、比べて、家族と話します。そしてまた戻ってきます。
つまり、一回の訪問で決めてもらう設計ではなく、二年のあいだ思い出してもらう設計が要る。私はそう考えています。
ここが分かっていないと、申し込みの導線を目立たせる、期間を区切った企画を打つ、といった打ち手に寄ります。それで動く業種もありますが、住宅では早すぎることが多いように思います。まだ決める段階にいない人を、決めさせようとしてしまう。
ある住宅会社さんから、こんな話を聞きました。
はじめて見学会に来られた方から、半年後に改めてお問い合わせがあり、契約になったそうです。その方は、来場してから問い合わせるまでのあいだ、そのホームページを何度も見に来られていた。そして、スタッフの人柄をよく知っていらっしゃったとのことでした。
会社の側から見れば、この半年は何も起きていません。問い合わせが来ていないからです。ですがその方は、ずっと見ていました。決めるまでの時間は、こちらから見えないところで進んでいます。
ですから、この半年のあいだに何を見てもらえるかだと思っています。期間を区切った企画ではなく、どんな人が働いていて、どんな考えで家をつくっているのか。そういうものです。
2. 施工事例が、いちばん見られている
住宅会社のホームページで、いちばん長く見られているのは施工事例です。会社紹介でも、性能の説明でもありません。
ところが施工事例は、いちばん手が回らないところでもあります。現場が終わって、写真を撮って、載せる。その繰り返しの中で、だんだん「きれいな写真を並べるだけ」になっていきます。
私が施工事例で先に見るのは、写真の美しさよりも、そこに何が書かれているかのほうです。どんな悩みから始まったのか。何を選んで、何を選ばなかったのか。住んでからどうなったのか。
お施主様は、自分と似た人を探しているのだと思います。同じくらいの家族構成、同じくらいの予算、同じような迷い。その人がどう決めたのかを知りたい。ですから、写真の下に4行あるかどうかで、伝わり方がずいぶん変わります。
施工事例に書く4つのこと
もう1つ、住宅ならではの注意があります。写真を良く見せすぎないことです。広角で撮れば部屋は広く写りますし、色を調整すれば明るくも見えます。ただ、実際に見学に来た方が「思っていたのと違う」と感じたら、そこで終わってしまう。私はそこがいちばん怖いと思っています。
背伸びした会社案内は、続かない
3. ブランディングが、そのまま採用の話になる
これは、ほかの業種ではあまり起きないことのように思います。
住宅会社の経営者とお話ししていると、集客の相談から始まって、途中でたいてい人の話になります。大工が足りない。現場監督が採れない。若い人が入っても、続かない。
建設業の人手不足がずっと続いているから、というのが1つ。もう1つは、集客と採用が同じものを見ているからだと思っています。お施主様に「ここで建てたい」と思ってもらうものと、求職者に「ここで働きたい」と思ってもらうものは、ほとんど同じです。
会社が何を大切にしているか。どんな人が働いているか。どんな仕事をしてきたか。この3つは、お客様も求職者も見ています。
実際にあった話を書きます。
ある住宅会社さんから集客のご相談をいただいて、お話ししているうちに、経営層が見ている方向と、現場が見ている方向がずれているように感じました。そこを1つずつほどいていくと、ホームページに書いてあることと、現場で実際にやっていることが離れていました。集客の相談として入って、たどり着いたのはそこでした。
このとき一緒に見えてきたのが、採用ページです。
採用ページは求職者しか見ない、と思われがちですが、そうとは限りません。 お客様も見ます。
たとえば、ホームページには「しつこい営業はしません」と書いてある。ところが採用ページを開くと、売上や成長やノルマの話ばかりが並んでいる。それを読んだお客様は、どちらが本当なんだろう、と思います。どちらも嘘ではないのに、並べて読まれた瞬間に、信じられなくなってしまう。
ですから、外に出す言葉は揃えておいたほうがいいと考えています。集客のページと採用のページを別々に作ると、たいてい言っていることがずれます。そのずれに気づくのは、求職者だけではありません。
では、一般のデザイン会社ではだめなのか
そうは思いません。
腕のいいデザイン会社はたくさんありますし、業界に詳しくないからこそ、中にいる人が当たり前だと思っていることを「それは珍しいことですよ」と言えることもあります。私の場合も、住宅以外の仕事から学んだことを住宅に持ち込んでいます。
違うのは、その業種の前提を、説明するところから始めるかどうかなのだろうと思います。
検討に二年かかること。施工事例がいちばん見られていること。採用と地続きであること。これを毎回いちから説明するのは、お互いに時間がかかります。特化しているというのは、そこを飛ばして、中身の話から始められるということだと思っています。
選ぶときに聞いてみるとよいこと
住宅に特化していると書いてある会社に会ったら、次のことを聞いてみるといいかもしれません。特化の中身が、だいたい分かります。
- 施工事例のページを、どう作りますか(写真の話だけで終わるかどうか)
- 検討期間が長いお客様に、どう思い出してもらいますか
- 採用のことも一緒に考えられますか
- 公開したあと、誰が更新しますか
最後の質問は、特に大事だと思っています。住宅会社のホームページは、作って終わりではありません。施工事例が増えないままだと、半年ほどで古びて見えはじめます。自分たちで更新を続けられる形で渡してもらえるか。ここは、作る前に確かめておいたほうがいいところです。



