
価格は量で決まる。前段は削らない
写真も、パンフレットも、ホームページも、見積もりを比べるときの基準は「何枚・何ページ・何日」になりがちです。ですが、成果を決めているのは、その手前の部分です。今日は、住宅会社の販促でよく起きる「安く買ったのに、使えない」という話を書いてみます。
写真の出来は、シャッターを押す前に決まっている
撮影は、外から見ると「カメラマンが来て、何枚か撮って帰る」仕事に見えます。だから「一日いくらですか」と聞かれる。目に見えているのがその部分だけなので、当然だと思います。
ですが実際は、写真の出来はシャッターを押す前にほとんど決まっています。この写真は誰に見せるのか。見た人にどう思ってほしいのか。ホームページのどこで使い、隣にどんな言葉が入るのか。
たとえば同じ現場を撮るのでも、「ここで働きたい」と思ってもらうための写真と、「この会社に任せて大丈夫だ」と思ってもらうための写真は、まったく別物です。前者なら人の表情や、声をかけあう場面。後者なら整理された作業場や、手元の丁寧さ。撮る場所も、時間も、待つ瞬間も変わります。
そして当日までの準備もあります。現場を整える。いらないものをどける。動線を変える。光の時間を見て回る順番を組む。地味ですが、写真がいちばん変わるのは、正直この部分です。
「撮るだけなら、もっと安い人がいます」
この前段は、外からはほとんど見えません。だから値段は、見えている量で比べられます。何枚撮ったか、何ページ作ったか、何日かかったか。
そうすると「撮るだけなら、もっと安いところがありますよ」という話になります。これは実際そのとおりで、撮るだけなら安くできます。
ただ、その買い方をしたときに何が起きるか。写真はあるのに、使えないという状態になります。きれいだけれど、どこに使えばいいのか分からない。伝えたいことと合っていない。結局もう一度撮ることになり、安く買ったつもりが二回払っている。
これは、住宅会社の販促物でとくに起きやすいことです。完成写真は大量にあるのに、来場を後押しする一枚がない。施工事例は並んでいるのに、「この会社に頼みたい」と思わせる場面が写っていない。撮る前に、誰に何を伝えるかを決めていないからです。
作業を買うか、成果を買うか
これは「作業を買うか、成果を買うか」の違いだと思っています。
作業を買えば、その作業は手に入ります。ですが、それが効くかどうかは、買った側が自分で保証しないといけません。成果を買うというのは、前段の設計から一緒にやる相手を選ぶ、ということです。
そして、前段から一緒にやると、写真以外のものも良くなります。撮影のために現場を整えると、その状態はそのまま残ります。誰に何を伝えたいかを社内で話すと、スタッフが自分たちの見せ方を意識するようになる。「今日はお客様が来るから、ここを片付けておこう」と、言われなくても動くようになる。
撮影に行ったはずなのに、会社のほうが少し変わっている。私たちは、こういうことが起きたときに、いい仕事ができたと感じます。
予算を下げるなら、削るのは量
予算を下げてほしい、という場面は必ずあります。
このとき、つい、見えない前段のほうを削ってしまいがちです。打ち合わせの回数を減らす。事前の準備を省く。お客様からも見えていない部分なので、削っても指摘されないからです。
ですが、ここを削ると成果が落ちます。そして、落ちたことはあとでちゃんと伝わってしまう。安くしたのに満足してもらえない、といういちばんしんどい終わり方になります。
下げるときに削るなら、見えている量のほうです。ページ数を減らす。撮る場所を絞る。今回はここまでにして、次の段階でやりましょう、と範囲を区切る。減らすなら、質ではなく量。前段は削らない。これは、こちらの仕事を守るためではなく、発注する側が損をしないための線引きです。
判断を、隠さずに渡す
ここまでは撮影の話ですが、これは住宅会社の仕事そのものにも当てはまります。
お客様から見えているのは、完成した家と、当日の対応だけです。ですが実際は、その手前にたくさんの判断があるはずです。土地の条件を読む。将来の暮らし方から間取りを考える。過去の失敗を踏まえて先に手を打つ。あえて勧めないことを決める。そこがいちばん効いているのに、見積書には出てきません。
ただし、「見えないところで頑張っています」と言うだけでは伝わりません。どこの会社も言えてしまう言葉だからです。
ですから、伝えるのではなく渡す。なぜこの提案にしたのか、他にどんな案を検討して、なぜやめたのか。何を準備したのか。判断の部分を、隠さずに形にしてお渡しする。これをやると、価格の比べ合いから抜けていきます。同じものを安く買う話ではなくなるからです。
「これは、撮る前の部分だな」を一つ挙げてみる
もしよかったら、自社の仕事の中で「これは撮る前の部分だな」というところを、一つ挙げてみてください。
完成した家からは見えないけれど、実はそこで質が決まっている部分です。そして、それをお客様に言葉にして伝えているかどうか。伝えていないなら、次の一組だけでも伝えてみる。
たぶんそこが、いちばん自社の仕事の値打ちが伝わるところだと思います。



