
売り込みかどうかは、断られたあとに分かる
お客様と話していて、言おうかどうか迷うことはないでしょうか。
いま相談されているものより、こちらのほうが合いそうだと思う。頼まれていないところに、直したほうがよさそうな点が見えている。けれど口に出さない。押し売りに聞こえたら嫌だな、と思うからです。
黙るのは押し売りの反対ではない
売り込まないお店でありたい。そう考えている方ほど、言わないほうを選びがちです。僕も長くそうでした。
ただ、黙っていることは押し売りの反対側ではありません。お客様から見ると、その案は存在していないのと同じです。あることを知らないので、いいですねとも、今回はやめておきますとも言えません。
断られたのではなく、見せていないだけ。ここが抜けていたのかなと思います。
見せなかったものを他のお店で見かけたとき、お客様はこう思います。あそこでは出してもらえなかった、と。
売り込みとの分かれ目はそのあとにある
では、何を言っても売り込みにならないのか。そこには線があります。分かれ目は、言うかどうかより、言ったあとのほうです。
一度お伝えします。お客様が今回はやめておきます、と決めたら、そこで終わりにする。日を置いてもう一度持ち出したり、言い方を変えて説得を続けたりしない。続けた時点で、お客様のための話ではなく、こちらの売上をつくるための話に変わります。
伝えることと、押し続けること。似ているようで、まったく別のものです。一度で伝わらなかったなら、そのときではなかったということだと思っています。
断られたあとの気持ちで分かる
自分がどちらをやっていたかは、断られたあとに分かります。気持ちが軽くなるか、重くなるか。
本当にお客様のためだったなら、断られてもお伝えできてよかったと思えます。売上が欲しくて言っていたなら、もったいない、という気持ちのほうが先に出ます。ここは、自分にはごまかせないように思います。
美容室で考えてみる
ここからは作例です。いつも同じ形にしている常連の方が、今日も同じでお願いします、とおっしゃったとします。カウンセリングのときに髪の状態を見ていて、今の伸び方だと、別の形にしたほうがきれいに見えるだろうな、と気づいている。
言わずに同じ形にすれば、その日は、何ごともなく終わります。お客様は満足して帰られるかもしれません。別の見え方があったことは、お客様には最後まで届きません。
言うほうを選ぶなら、こう置きます。伸び方を見ていて、こういう形も似合いそうだと思いました。理由はここです。今日は今までどおりでも、もちろん大丈夫です。
そのうえで、今までどおりで、と言われることもあります。そのときは今までどおりに切ります。次にいらしたときに、その話をもう一度持ち出すことはありません。置いた材料は、お客様の中に残ります。
見えているものを机に置く
決めるのはお客様です。これは変わりません。見直せるのは、決める前に何が机の上にあったか、のほうです。
お店にできるのは、見えているものを机に置くところまでです。置いたうえで選んでいただいたなら、どちらの答えでも気持ちよく終わります。置かずに選んでいただいたときだけ、あとから引っかかりが残ります。



