
何と比べられるかで、商品の弱みは変わる
カレーとライスが最初から混ざっているものは、カレーライスとは言えない。
日清食品のカレーメシは、発売したばかりのころ、こんな意見を受け取っています。いまの名前になる前の話です。
商品の弱みだと思っていたところが、比べられる相手のせいで弱みに見えていた、ということがあります。今回は、その比べられる相手を選び直す話です。
カレーライスの棚に置かれたカレー
カレーメシの前身は、2013年に出た「日清カップカレーライス」です。水を入れて電子レンジで温める、カップのカレーでした。味の評価は高かったそうです。
それでもカレーライスという名前で出ている以上、食べる人はカレーライスと比べます。ご飯とルーが分かれて盛られた、あのお皿です。その基準で見れば、混ざっていることは欠点になります。中身の出来とは関係なく、名前が比べる相手を決めていました。
日清食品は、発売から半年後の2014年に、名前を「カレーメシ」に変えます。打ち出したのは「ルゥでもレトルトでもない『第3のカレー』」でした。カレーライスとして分かってもらうのをやめて、カレーライスの隣に並ばない、別の食べものとして出し直した。
新しい食べものとして見れば、混ざっていることは、この商品らしさになります。同じ特徴が、比べる相手を替えたことで、欠点から個性に変わりました。作り方が電子レンジからお湯に変わったのは、2年後の2016年です。日清食品の担当者によると、この変更のあと、年間の売上は倍になりました。
値段の高い安いも、比べる相手が決めている
明治のザ・チョコレートは、2014年に220円(税別)で出ました。スーパーやコンビニの板チョコは100円前後のものが多く、その棚では倍以上の値段です。出だしは思うように売れなかったと、のちの記事は伝えています。
二年後の2016年9月、箱も形も、味の名前も一新されます。茶色いクラフト紙風の箱の中央には、カカオの実。スティック7本入りだった形は板3枚入りになり、味の名前には「華やかな果実味」「力強い深み」のような言葉が使われるようになりました。
値段はほぼ据え置きでした。それで7か月のうちに2,000万個以上が売れ、計画の2倍を超える勢いだったと、2017年のPRESIDENT Onlineが伝えています。100円の板チョコと比べられているあいだ、220円は高い値段でした。カカオを選んで味わうものとして見てもらえるようになると、同じ220円が、その体験に払うお金に変わります。
地域の写真館で考えてみる
ここからは作例です。地域で三十年ほど続いている写真館が、七五三の撮影プランを税込33,000円で出しているとします。データは30カットつき。最近、問い合わせが減ってきました。
見込みのお客様が比べているのは、近くの撮影チェーンの、データ全カットつき2万円台のプランと、自分のスマートフォンです。この比べ方だと、見られるのは値段とカット数だけになります。33,000円で30カットは、分の悪い勝負です。
そこで去年撮影したご家族に、この写真館に決めた理由を聞いてみます。返ってきたのが、着付けのあいだに子どもがぐずっても、泣きやむまで待ってくれた、祖父母も一緒に写れた、の二つだったとします。
どちらも、カット数の話ではありません。この家族が選んでいたのは、写真というより、行事の一日をどう過ごすかでした。比べる相手を、撮影サービスから、七五三の一日の過ごし方へ置き直せます。
- プラン名:「七五三撮影プラン」から、「七五三の一日、支度から撮影まで」へ。
- 一番上の一文:「着付けのあいだ、お子さんが泣いても、泣きやむまで待ちます。」
- 並べる写真:仕上がりの一枚だけでなく、支度をしているときの家族写真も入れる。
- 値段とカット数:消さずに、この下へ移す。
比べる相手が撮影チェーンのままなら、次に考えるのは値下げです。一日の過ごし方として比べてもらえれば、泣きやむまで待つことが、選ぶ理由として並びます。
比べられている相手を書き出す
自社の商品で試すなら、順番はこうなります。
- お客様が、自社の商品と一緒に検討していそうなものを三つ書き出す。同業の店だけでなく、スマートフォンや自分でやる、のような選択肢も入れる。
- その三つと並べたとき、何で比べられているかを一語で書く。値段、量、カット数、近さ。
- その比べ方で、自社の良さが勝てる側に入っているかを見る。入っていなければ、最近選んでくれたお客様に決め手を聞き、その言葉で比べる相手を選び直す。
カレーメシの中身は、混ざったままです。変えたのは、何の隣に並ぶかでした。



