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Journal ジャーナル
住宅会社の求人票を決め手で書き直す
2026.09.16

住宅会社の求人票を決め手で書き直す

大工や現場監督の募集をかけても応募が来ない。そういうとき、次に考えるのはたいてい月給の額です。二万円上げるか、三万円上げるか。その話の前に、求人票の中でまだ使っていない言葉があります。

住宅会社の求人票も、上の段から順に、月給、休日、社会保険と埋まっていきます。困るのはその下です。仕事の内容を書く欄に、何を入れるか。

辞めた理由と選んだ理由は並びが違う

転職した人が、いまの会社をどこで選んだのか。厚生労働省の転職者実態調査に、その数字があります。5,530人が三つまで選ぶ形で答えたもので、最も多かったのが仕事の内容で、41.0%。以下、自分の技能や能力が活かせるが36.0%、賃金以外の労働条件がよいが26.0%と並び、転勤が少ない、通勤が便利が20.8%。賃金が高いからは五番目で、15.1%でした。

この調査については、ふたつ断っておきます。五年おきの調査で、最新の実施は令和二年、2020年です。少し前の数字として受け取ってください。それから、このあと挙げるもうひとつの調査とは、別々に行われたものです。ふたつの数字を引き算する読み方はできず、言えるのは、並びが違う、というところまでになります。

そのもうひとつが、転職サイトのdodaが出している転職理由ランキングの2025年版です。こちらは辞めた側の理由で、20代から50代の正社員978人のうち、給与が低いを挙げた人が36.6%と最も多く、五年連続の一位だそうです。労働時間に不満があるが26.3%、個人の成果で評価されないが22.8%、尊敬できる人がいない、と続きます。

辞めるときの一位は給与、選ぶときの一位は仕事の内容。この並びの差が、求人票の現状を言い当てています。月給と休日と福利厚生の欄は、辞めた理由の上位二項目、給与と労働時間を受け止めるところです。休日と社会保険は、賃金以外の労働条件という選択肢にも重なります。手つかずのまま残っているのが、選ぶときの上位二項目、仕事の内容と、技能が活きるかどうかの側です。

造園会社の求人票で試してみる

まず作例をひとつ。造園の会社で考えます。職人が六人、個人のお宅の庭を、設計から木を植えるところ、剪定まで請けているとします。求人票の中身は、月給二十三万円からで、週休二日、社会保険は完備、未経験歓迎、最後にアットホームな職場ですの一文。近くの三社もほとんど同じなら、読んだ人にできるのは月給の比較だけになります。

ここ三年で入った人に、ほかにも受けていた会社があった中で、うちに決めたのは何でしたか、と聞いてみます。返ってきたのが、面接で見せてもらった庭の写真がどれも違う庭だった、一年目から自分の担当の現場を持たせてもらえると言われた、剪定の資格を取る日は休みを使わなくていいと聞いた、の三つだったとします。

どれも給料の話ではありません。仕事の内容と、技能が活きるかどうかと、働くときの条件です。この三つを、仕事の内容を書く欄へ持っていきます。すると、同じ庭はひとつもありません、一年目から自分の現場をひとつ持ちます、剪定の資格を取る日は出勤あつかいです、という求人票になります。

工務店の大工募集で同じことをやる

住宅会社でも同じです。ここからも作例で、年間十二棟ほどを建てている工務店を考えます。社長と大工が三人、現場監督がひとり。大工をもうひとり探しています。

いま出している文面は、こうだとします。

大工募集。月給二十六万円から。週休二日。社会保険完備。未経験歓迎。アットホームな職場です。

ここ三年で入った人に決め手を聞いたら、こんな答えが返ってきたとします。

  • 完成見学会で見た階段と収納が、既製品ではなく現場で作ったものだった
  • 一棟を基礎から引き渡しまで、同じ人が通しで見ると聞いた
  • 現場が全部、車で三十分の中にあって、道具を家に持ち帰らなくていい

三つめは、調査でいう転勤が少ない、通勤が便利にあたります。この項目は、二百九十九人までの会社ならどの規模でも20%台でしたが、千人以上の会社では14.7%でした。小さい会社のほうが上に来ています。通う距離の話は、地域で仕事をしている会社が書ける言葉です。

この三つを使うと、仕事の内容の欄はこうなります。

  • 一棟を、基礎から引き渡しまで通して担当します。途中で担当が替わることはありません。
  • 階段と造作収納は、いまも現場で刻んでいます。
  • 現場は全て、会社から車で三十分の中です。道具は会社に置いて帰れます。

月給二十六万円から、週休二日、社会保険完備は、消さずにこの下へ移します。応募するかどうかを決めるときに要る材料です。動かすのは順番であって、中身ではありません。

未経験歓迎とアットホームを言い直す

残ったふたつも書き直せます。未経験歓迎は、読む人が知りたいことに答えていません。知りたいのは、未経験で入ったら何をどの順番で覚えるのか、です。

この工務店なら、最初の三か月は材料の名前と、墨つけの見方を覚えるところから。刻みに入るのは半年目から。こう書けます。ここまであれば、大工をやったことのない人でも、自分の半年後を思い浮かべられます。

もうひとつ、アットホームな職場です、のほうは、選ぶ理由の上位には出てきませんでした。職場の空気を伝えたつもりの一文ですが、読む側には何も渡りません。近くの工務店の求人票にも、たぶん同じ言葉が載っています。ここに入れるのは、その職場で実際に起きていることです。

朝は現場に直行せず、全員で事務所に寄って、その日の段取りを確かめます。

そう書けば、朝に全員で集まる形がいいと感じた人から応募が来ます。現場で会えれば十分だと考えている人からは、来なくなります。件数としては減るかもしれません。それでも、合わない相手と面接の時間を取り合わずに済みます。

規模や知名度では選ばれていなかった

会社の大きさを決め手に挙げた人の割合も、同じ調査に出ています。規模や知名度を選んだ人は、従業員が五人から二十九人のところで4.6%。千人以上では18.0%まで上がっていました。地域の工務店の規模だと、この項目はほとんど動いていません。

成長を続ける企業です、地域No.1の施工実績。求人票の頭にこう置いても、そこを決め手にした人は少なかった、ということになります。同じ場所に置くなら、仕事の中身か、通う距離のほうです。

手順にすると五つ

  1. ここ三年で入社した人に、決め手をひとつ聞く。ほかにも受けていた会社があった中で、うちに決めたのは何でしたか。
  2. 本人の言い方を、そのまま記録に残す。整理すると調査の選択肢の言葉に戻ってしまうので、口から出た形のまま残しておく。
  3. 配布中の求人票と、その記録を突き合わせる。記録にある言葉が求人票にひとつも見当たらないことが多いはずです。
  4. 見当たらなければ、その言葉を一文に起こして、仕事の内容の先頭へ置く。
  5. 月給、休日、社会保険の三つは、そのまま先頭の下へ送る。

一文足すだけで、近くの工務店とは違う求人票になります。