
お施主さまの決め手は、仕様ではないことがある
ホームページやパンフレットで、いちばん大きく出しているのは何でしょうか。多くの住宅会社さんでは、性能や標準仕様、施工事例の写真です。いちばん力を入れてきたところなので、当然だと思います。ですが、お施主さまが最後に決めた理由は、そこではないことがある。今日は、その”ずれ”の話を書きます。
決め手は料理の写真ではありません
身近な例から入ります。
ご飯を食べに行こう、というときに、検索して、写真を見て、口コミを見て、ここにしよう、と決めますよね。
そのときの決め手は、何だったでしょうか。
料理の写真だった、ということもあります。ですが、けっこうな確率で、違うところで決まっていないでしょうか。駐車場があるかどうか。子どもを連れて行けるかどうか。夜遅くまでやっているかどうか。予約が要るのか、ふらっと行けるのか。
一方でお店の側は、たいてい料理の写真をいちばん大きく出しています。いちばん自信があるところなので、当然です。
ですが、選ぶ側が最後に見ているのは、駐車場だったりします。
選ばれる理由は、売る側が推したいところとずれていることが多い。これは、住宅でもそのまま起きています。
断熱等級より返信の速さで決まる
住宅は、比較検討の期間が長く、判断材料も多い。断熱性能、耐震等級、標準仕様、価格、施工エリア。どれも大事な情報です。
ですが、実際にご契約いただいたお施主さまに「なぜうちに決めたのですか」と伺うと、返ってくる答えは違うことがあります。
質問への返信が早かった。子どもを連れて行っても嫌な顔をされなかった。他社の悪口を言わなかった。予算の話を最初にしてくれた。断ったことがある会社なのに、その後も感じよく対応してくれた。
こういう理由が、実はかなり効いています。
ここで大事なのは、これらがホームページのどこにも書かれていないことが多い、という点です。書かれていないので、まだ会っていない方には伝わりません。伝わらないので、そもそも比較の土俵に乗らない。
性能の話を削る必要はありません。ただ、実際に選ばれている理由が一つも載っていないページになっていないか、一度見ていただきたいのです。
見ているところが人によって違う
もう一つ、住宅で特に外しやすいところがあります。
使う人と、決める人が違うことがある、という話です。
分かりやすいのは、子どものおもちゃでしょうか。使うのは子どもですが、お金を払うのは親です。子どもがどれだけ欲しがっても、親が「それはちょっと」と言えば買われません。逆に、親が「知育に良さそうだ」と思えば、子どもがそこまで欲しがっていなくても買われます。
贈り物でも同じことが起きます。使うのは相手ですが、選ぶのは自分。だからギフト売り場の言葉は、贈る人に向けて書かれています。「喜ばれます」「失礼になりません」。使う人にではなく、選ぶ人に向いているのです。
住宅は、これがもっと複雑です。
毎日いちばん長くその家にいる方と、住宅ローンの名義になる方と、間取りに強い希望を持つ方が、それぞれ違うことがあります。ご両親が資金援助をされる場合は、そこにもう一人加わります。
ところが、ホームページやカタログは、一人の読み手だけを想定して作られていることが多い。デザインの好みに響く言葉ばかりが並んでいて、資金計画や返済の話がどこにもない、あるいはその逆、ということが起こります。
これは誰が使って、誰が決めるのか。この一点を確認してから原稿を作るだけで、伝わり方がかなり変わります。
比べる相手は同じくらいの規模に
自社の見せ方を考えるときに、他社を見ることは有効です。ここで一つだけ、お伝えしたいことがあります。
比べる相手は、憧れの大手ではなく、自社と同じくらいの規模の会社にしてください。
大手と比べると、違いが多すぎます。広告予算も、人数も、知名度も違うので、何を取り入れればいいのか分からなくなります。それで「うちには無理だ」で終わってしまう。
同じくらいの規模なら、違いが少ないので、一つひとつが見えます。あの会社は施工中の写真を載せている、うちは完成写真しかない。あの会社は担当者の顔と経歴を出している、うちは会社概要だけ。そのくらいの粒で出てきます。その粒が、そのまま次にやることになります。
一つだけ変えて結果を見る
最後に、進め方の話です。
ホームページを見直すとき、写真もキャッチコピーも導線も同時に変えたくなります。ですが、全部いっぺんに変えると、問い合わせが増えたときに何が効いたのか分かりません。次に何をすればいいかも分からなくなります。
一つだけ変えて、結果を見る。地味ですが、これがいちばん確実です。
そして、この観察は、机の上ではなく日常の中でできます。ご自身が何かを買うときに、なんでこれを選んだんだろう、と一度だけ考えてみる。選ばれる理由がどこにあるのかは、自分が買う側にいるときがいちばんよく見えます。
自分が買うときにやっていることを、そのまま売るときにも思い出せるかどうか。ここが、けっこう差になると思っています。



