
50代に響くのは「リフォーム」か「リノベーション」か。データから考えてみた
住宅会社のホームページをつくっていると、「リフォームとリノベーション、どちらの言葉を使ったほうがいいですか」という話になることがあります。
特にターゲットが50代の場合、「50代なら、リノベーションより、昔から馴染みのあるリフォームのほうが伝わるのでは」と考える方も多いと思います。私も、なんとなくそんなイメージを持っていました。
でも、データを調べてみると、少し違った景色が見えてきます。
そもそも、リフォーム市場の中心は50代以上
まず知っておきたいのが、実際に住まいを直している人の年齢です。
国土交通省の「住宅市場動向調査」(令和6年度)を見てみます。リフォームを実施した世帯の世帯主は、40代が17.5%、50代が25.0%、60歳以上が48.2%。平均年齢は58.8歳でした。
リフォームを実施した世帯の世帯主の年齢(令和6年度)
出典1をもとに作成。平均年齢58.8歳。30歳未満と無回答(合わせて約3%)は図から省略しています。
50代以上だけで、全体の7割を超えています。つまりリフォームという市場そのものが、かなり50代以降を中心に動いているわけです。
考えてみれば当然なのかもしれません。30代で家を建てたとすると、50代になった頃には築20年前後。外壁や屋根、水まわりなどが気になり始めます。子どもが独立したり、夫婦二人の暮らしになったりするのも、この年代です。
「壊れたから直す」だけではなく、これからの暮らしに合わせて家を見直す。そんなタイミングが50代なのだと思います。
では「リノベーション」は若い人の言葉なのか
ここが今回、いちばん気になったところです。
「リノベーション」というと、中古マンションを買って、コンクリートをむき出しにして、おしゃれな空間をつくる。そんな若い世代のイメージを持つ方もいるかもしれません。
ところが、リクルートのSUUMOリサーチセンターが行った『住宅購入・建築検討者』調査(2025年)を見ると、少し違います。住宅の購入や建築を検討している人のうち、「中古マンション」を検討している割合は、40代が36%、50代が34%、60代が32%。20代の27%、30代の29%より高いのです。
「中古マンション」を検討している人の割合(年代別・2025年)
出典2をもとに作成。住宅の購入・建築の検討者ベース(複数回答/リフォームのみの検討者は除く)。
中古を買って、自分たちに合わせて直す。この選び方は、若い世代のものではありません。むしろ40代から60代のほうが、その選択肢を見ています。
同じ調査で「リフォーム」を検討している割合を見ても、20代16%、30代14%、40代20%、50代15%、60代15%。年代による差は、思ったほど大きくありませんでした。
「リノベーション」は、もう新しい言葉ではない
言葉そのものの浸透も、かなり前に済んでいます。
リクルート住まいカンパニーが2012年に行った調査があります。住宅の購入を検討している1,918人が対象です。「リノベーション」という言葉を知っている人は89.7%。5年前の調査から19.9ポイント上がっていました。「リノベーションは魅力的だ」と答えた人も70.8%います。
2016年度の同じ調査では、認知率は96.9%まで上がっています。
つまり「50代にはリノベーションという言葉が伝わらない」という前提は、10年以上前の時点ですでに、少し古くなっていたのかもしれません。
では結局、どちらを使えばいいのか
私なら、入口は「リフォーム」、価値は「リノベーション」と考えます。
なぜなら、この二つは似ているようで、受け取る印象が少し違うからです。
「リフォーム」と聞くと、古くなったものを直す。キッチンを交換する。外壁を塗り替える。お風呂を新しくする。そんな「今ある不便を解消する」イメージがあります。
一方で「リノベーション」には、間取りを変える。暮らし方を変える。性能を上げる。家そのものの価値を見直す。という、これからの暮らしをつくるニュアンスがあります。
50代の方にとって重要なのは、実はこの後者ではないでしょうか。
50代が考えているのは「家を直すこと」だけではない
これも、データに出ています。
先ほどの住宅市場動向調査で、リフォームの動機を見てみます。最も多いのは「住宅がいたんだり汚れたりしていた」で32.1%。ですが、そのすぐ下に並ぶのは、修繕とは少し違う理由です。
リフォームの動機(令和6年度・複数回答/上位6項目)
出典1をもとに作成。色の濃いバーは、修繕ではなく「これから」に向けた動機。
「家を長持ちさせるため」が21.7%。「さしあたり不満はなかったがよい住宅にしたかった」が14.5%。「家族や自分の老後に備えるため」が10.0%。壊れたから直す、だけではないのです。
住まいに求めるものが変わることも、数字に出ています。先ほどのSUUMOの調査で「購入、建築、リフォームしようと思った理由」を年代別に見てみます。「子どもや家族のため、家を持ちたいと思った」は、30代で27%あるのに、50代では8%まで下がります。入れ替わるように増えるのが「老後の安心のため、住まいを持ちたいと思った」。50代では23%でした。
「購入・建築・リフォームしようと思った理由」年代別(2025年)
出典2をもとに作成。住宅の購入・建築の検討者ベース(複数回答)。40代で二つの理由が入れ替わります。
50代になると、家族の形が変わります。子どもが独立する。使わない部屋が増える。階段が少し大変になる。冬の寒さが以前より気になる。光熱費も気になる。そして、ふと考えます。「この家で、あと何年暮らすんだろう」。
おそらく50代の住まいづくりで大切なのは、古くなった家を新品に戻すことではありません。これから20年、30年をどう暮らすかを考えることです。
実際、住宅リフォーム推進協議会の調査(令和7年2月公表)にも、それは出ています。リフォームを検討している人が予算以外に最も重視する点は「省エネ性の向上が見込めること」で27.5%。「リフォームで実現したいこと」でも「省エネ性能を高める」が35.0%で最も多くなっています。
だから、「キッチンリフォーム」「お風呂リフォーム」だけでは、少しもったいない。50代には、これからの暮らしを整えるリフォーム、という伝え方のほうが、本質的なのではないかと思います。
言葉よりも、「何が変わるのか」が大切
ここまで調べてみて、ひとつ分かったことがあります。「リフォームとリノベーション、どちらが50代に響くのか」という問い自体を、少し変えたほうがいいのかもしれません。
データを見る限り、50代はどちらの言葉も知っていますし、どちらの選択肢も見ています。だから大切なのは名称ではありません。その先にある暮らしを想像できるかどうかです。
たとえば「全面リノベーション」より、「子どもが独立した今、夫婦二人にちょうどいい家へ。」
「断熱リフォーム」より、「冬の朝、布団から出るのがつらくない家へ。」
「バリアフリーリフォーム」より、「10年後も、この家で安心して暮らせるように。」
こう言われたほうが、自分のこととして考えやすくなります。
50代には「第二の家づくり」という考え方が合う
私は、50代のリフォームを「第二の家づくり」と考えてもいいと思っています。
最初の家づくりは、子育てのための家だったかもしれません。部屋数が必要で、収納が必要で、学校までの距離を考えて。
でも50代からは違います。夫婦二人が心地よく暮らせること。暖かいこと。家事が楽なこと。好きなことを楽しめること。そして、なるべく長く安心して暮らせること。家に求めるものそのものが、変わっていきます。
だからこそ、「古くなったから直すリフォーム」から、「これからを楽しむためのリフォーム」へ。住宅会社が50代へ伝えるべきなのは、もしかすると「リフォームか、リノベーションか」という名称ではなく、こちらなのだと思います。
まとめ
50代には「リフォーム」と「リノベーション」のどちらが響くのか。調べる前は、私も「リフォームのほうが50代には馴染みやすいのでは」と思っていました。
でもデータを見ると、リフォーム市場の中心はすでに50代以上で、中古を買って直すという選び方も40代から60代のほうが多い。言葉の認知も、10年以上前から9割近くありました。
だから私なら、検索やサービス名称では「リフォーム」を使いながら、伝える価値は「リノベーション的」にする。そんな使い分けをします。
「リフォームしませんか?」ではなく、「これからの暮らしに合わせて、もう一度、家をつくりませんか?」
50代には、こちらのほうがずっと響くのではないでしょうか。
出典
- 国土交通省「令和6年度 住宅市場動向調査報告書」(令和7年6月)報告書PDF/リフォーム実施世帯の世帯主の年齢・リフォームの動機
- リクルート SUUMOリサーチセンター『住宅購入・建築検討者』調査(2025年/2026年4月16日公表・有効回答4,061人)調査ページ/検討住宅種別・購入等を検討した理由(いずれも年代別)
- 一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームに関する消費者・事業者に関する実態調査」(令和7年2月)調査結果の概要PDF/リフォーム検討者が重視する点・実現したいこと
- リクルート住まいカンパニー「2012年 住まい購入検討者意向調査」(2012年9月調査・有効回答1,918人)の報道よりR.E.port/「リノベーション」の認知率89.7%・魅力度70.8%
- 同「『住宅購入・建築検討者』調査(2016年度)」の報道より不動産ジャパン/「リノベーション」の認知率96.9%



