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Journal ジャーナル
値上げの理由は、使い道をひとつ書く
2026.09.19

値上げの理由は、使い道をひとつ書く

値上げのお知らせを書くとき、理由の段落には、つい言葉を並べたくなります。昨今の物価高騰、原材料費の上昇、人件費や物流費の増加。どれも本当のことですし、書いておかないと納得してもらえない気がします。

ただこの並びは、どこのお店のお知らせとも同じ文になります。

お知らせもその店の言葉として読まれる

値上げのお知らせも、お客様がその店から受け取る言葉のひとつです。ホームページや看板と同じように、その店の言葉として読まれます。しかも自分のお金に関わることなので、ふだんよりじっくり読まれます。

どこの店でも書ける理由が並んでいると、せっかくの一枚から、その店らしさが消えてしまいます。理由は長く書かず、そのお店の理由をひとつだけ置く。そのほうが、読む人に届くと思います。

上がったぶんで何をしたいか

その店の理由を見つけるときは、こう聞いてみます。

「上がったぶんで、何をしたいですか。」

音声では、子ども向けのピアノ教室を例に話しました。月謝を8,000円から8,800円にする教室の先生に、この質問をしてみる。すると、レッスンで使うピアノの調律を年に一回から二回に増やしたい、という答えが返ってきたとします。それなら、お知らせにはこう書けます。

「レッスンで使うピアノの調律を、来年から年に二回にします。」

これは値上げの理由であり、値上げで何が良くなるのかの話にもなっています。保護者の方は、上がった800円が、子どもがレッスンでさわるピアノに回ると分かります。

町のパン屋で考えてみる

もうひとつ、作例を置きます。家族三人で営む町のパン屋が、食パン一斤を380円から420円に上げることにしたとします。最初に書いたお知らせは、こうでした。

「小麦粉やバターをはじめとする原材料の価格高騰、光熱費の上昇により、誠に心苦しいのですが、価格を改定させていただくこととなりました。」

ここで、上がったぶんで何をしたいかを三人で話してみます。すると、朝に焼いている食パンを、午後にももう一度焼きたい、という答えが返ってきたとします。夕方に来るお客様から、食パンはもう無いんですか、と聞かれることが多かったからです。

それなら、理由はこう書けます。

「10月から、食パン一斤を380円から420円に改めます。生地と焼き方は、今と変わりません。午後2時にも、もう一度焼き上げるようにします。」

理由の段落が、一文になりました。原材料の話は、書くならひとことで足ります。夕方にしか来られないお客様にとっては、値上げのお知らせが、食パンが買えるようになるお知らせにもなっています。

理由は金額と変わらないことのあと

最初の一文は、いつから、いくらになるか。その次に、変わらないこと。理由を置くのは、そのあとです。

金額より先に理由やお詫びが続くと、読む人は、何か良くないことが起きたのだと身構えます。申し訳ないと思いながら書いた値段を、読む人が気持ちよく払うのは、なかなか難しいと思います。金額と変わらないことを先に読んでもらえれば、理由は、これから良くなることの話として読まれます。

自分のお知らせで確かめること

  1. 値上げのお知らせの下書きを開き、理由の段落に印をつける。
  2. その段落から「物価」「原材料」「人件費」を消してみて、何も残らなければ、上がったぶんで何をしたいかを考える。お店を一緒にやっている人がいれば、その人にも聞く。
  3. 返ってきた答えを、お客様から見て何が変わるかの一文に書き直す。
  4. その一文を、金額と変わらないことのすぐ下に置く。

上がったぶんの使い道が書いてあるお知らせは、お客様がその店のこれからを知る一枚になります。