
買う前に、代わりに何を出すかを決める
お店の奥や作業場には、いつか使うかもしれないものがたまっていきます。壊れていないし、買ったときは高かった。人からもらったものは、手放すと悪い気がする。どれも大事な理由です。
いつか使うかもしれないものは、そのいつかが来るまで、ずっと情報を出しつづけます。目に入るたびに、これはどうしよう、と頭の中を一文が通る。使うかどうかを、こちらが毎回もう一度決めることになります。
置いてあるだけで、決めることが増える
僕はここのところ、服や家の中のものを捨てています。やってみて一番腑に落ちたのは、ものは情報だ、ということでした。置いてあるだけで、目は全部読んでいます。
決める数が減らないのは、たいてい、この手のものが残っているからです。一つずつは小さな決めごとでも、数が重なれば、そのぶん少しずつ削られていくのだと思います。
新しいお菓子の説明を書く。次の季節に何を届けるかを考える。お店をしている人にとって、こうした時間はお店の言葉をつくる時間です。考えて言葉にする仕事の材料は、頭の空きです。ものが多いと、その空きが少しずつ埋まっていきます。
手に取ったときに聞く、三つの問い
ものを手に取ったときに、僕が自分に聞いている言葉が三つあります。
- これを最後に使ったのは、いつですか。
- 同じことをするものが、ほかにありますか。
- これは使ったあと、どこへ戻すものですか。
三つめは、捨てるかどうかを決める前に答えが出ます。戻す先がすぐに出てこないものは、これまでも戻っていなかったものです。
買うときにだけ使える問い
三つとは別に、買うときにだけ使える問いがもう一つあります。
これが来たら、代わりに何を出しますか。
買う前に出すものを決めておくと、あとで捨てる回数が減ります。捨てるのがうまくなるより、こちらのほうが楽です。
捨てているうちに、僕は買うときの考え方が変わりました。何かを買おうとしたとき、それをどこに置くのか、いまあるどれと入れ替わるのかを考えてから決めるようになりました。捨てるのは減らす動きで、買うのは増やす動きです。同じ頭でやっているので、片方をやると、もう片方の手つきも変わるのだと思います。
焼き菓子のお店で考えてみる
ここからは作例です。一人で焼き菓子のお店をしている方が、秋に向けて新しい箱を仕入れようとしているとします。作業場の棚には、春に使った箱の残りと、いつか何かに使えそうなリボンが何巻かあります。
まず棚のものを三つの問いに当てます。
- 春の箱:最後に使ったのは五月。秋の詰め合わせにも、大きさは合う。
- リボン:最後に使った日が思い出せない。戻す先も決まっていない。
そのうえで、新しい箱について、代わりに何を出すかを決めます。春の箱は、秋の詰め合わせの小さいほうに回して、使い切ったら終わりにする。リボンは、戻す先が出てこなかったので、ここで外す。新しい箱は、その二つが棚から出ていく前提で仕入れます。
これなら新しい箱が入っても、棚の前で迷うものの数は増えません。
足す前に、出すものを決める
お店では、新しいものを足す話が先に進みがちです。次に何かを仕入れたり、道具を買い足したりするときは、代わりに何を出すかを一つ決めてから、注文の画面を開いてみてください。



