
強みの文はよその会社でも言えるか
「品質と信頼でお応えします」。会社案内や採用ページで、何度も見かける一文です。間違ったことは書いていません。ただ、この文は、どこの会社が名乗っても成り立ってしまいます。
強みを言葉にしたあと、最後に一回だけやっている確かめ方があります。できた文を、よその会社が言っても成り立つかどうか。成り立つなら、その文はまだ言葉になりきっていません。
ひとつの欲求だけだと横に並ぶ
ブランドを考えるとき、僕は人の六つの欲求という道具を使っています。選ぶ理由の奥にある気持ちを、六つに分けたものです。
- 確実性:安心したい
- 多様性:変化がほしい
- 重要感:認めてほしい
- つながり:誰かと関わっていたい
- 成長:伸びたい
- 貢献:誰かの役に立ちたい
商売はたいてい、このどれかに応えています。ただ、応えているのがひとつだけだと、同じ気持ちを狙っている会社と横に並んでしまう。品質と信頼を掲げる会社は、ほとんどが確実性の一点で勝負している状態です。
二つを掛け合わせると相手が減る
独自性は、二つを掛け合わせたところに生まれます。
たとえば部品をつくる工場。図面が急に変わっても、週明けには間に合わせる。ここは確実性です。その背景に、昔お客様のラインを止めてしまった記憶があって、相手の現場を自分の心配として抱えている。こちらはつながりです。
確実性とつながりを重ねると、「図面が変わる前提で段取りを組んでいます」という文にたどり着きます。同じ市内の同業者が、この文をそのまま名乗ることはできません。
三つ以上を選ぶと、輪郭がぼやけます。全部を強みにした会社は、結局どれも強みとして伝わらない。二つで止めるのは、比べられる相手を減らすためです。
やらないことが輪郭をつくる
強みの文を具体にする方法が、もうひとつあります。やらないことを書くことです。
僕の会社には、やらないことを並べたリストがあります。コンペには参加しない。広告代理店を介した仕事はしない。価格だけで比べられる仕事は選ばない。
何をするかより、何をしないかのほうが、その会社らしさをつくっているのかもしれません。
お客様との打ち合わせでも、やらないことから聞くことがあります。たとえばリフォーム会社なら、強みはたいてい地域密着と出てきます。これも、どこでも言える。そこで、受けたくない仕事を聞いてみる。
間取りが全部決まってから呼ばれる仕事。そう返ってきたとします。決まったものをつくるだけになるから、と。
つまりこの会社は、決める前に呼んでほしい会社です。地域密着という言葉より、ずっと人の顔が見えてきます。
社名を差し替えて読む
確かめ方は、手元でもできます。自社のサイトや会社案内から、強みを書いた文をひとつずつ抜き出す。社名のところを、近くの同業者の名前に差し替えて読んでみる。
それでも違和感なく読めてしまう文があれば、そこはまだ、よその会社と同じ言葉で話しているところです。



