
ロゴをつくり直しても、それだけでは選ばれない
ロゴやサイトをつくり直せば、他社と差がつく。もっと選ばれるようになる。そう考えて見た目から手をつける住宅会社は、少なくありません。でも、ロゴを新しくしただけで選ばれるようにはなりません。ロゴは器で、注がれるのは、打ち合わせや現場での体験のほうだからです。
あのロゴが優れていたから、強くなったのか
誰もが知っているブランドのマークを、いくつか思い浮かべてみてください。かじられたりんご、緑の丸いコーヒー、三本線。名前を言わなくても浮かぶし、雰囲気まで立ち上がってくる。
では、あのロゴのデザインが優れていたから、強くなったのでしょうか。順番は逆だと思います。形だけを見せられても、そんなに感想は出てこない。マークを見ていろんなものが立ち上がるのは、その形と一緒に過ごした時間が、こちらの中に溜まっているからです。ロゴが意味を持っていたのではなく、あとから意味が入っていった。
ロゴは器、注がれるのは現場の体験
ロゴは器だと思っています。それ自体はからっぽで、最初はただの形。そこにいい体験が注がれると中身が溜まり、そうでない体験が注がれればそれも溜まる。同じマークでも受ける印象が人によって違うのは、その人がその器に何を注いできたかが違うからです。
住宅会社にとって、その「注がれるもの」は何か。最初の問い合わせの電話の感じ。打ち合わせでの、こちらの話の聞き方。現場の整い方。引き渡したあとの、ちょっとした連絡。お客様は、そういう一つひとつの体験を、会社のマークに注いでいます。だから、体験がいいものになっていれば、マークにいい中身が溜まる。ロゴを磨くより先に、この体験の質が問われます。
ロゴを変えても、それだけでは売上は上がらない
「ロゴを変えたら、集客は変わりますか」と聞かれると、正直に「変えただけでは、たぶん変わりません」とお答えします。中身が変わっていないのに器だけ新しくしても、注がれるものは同じだからです。むしろ、長く使ってきたマークには、その会社が積み上げてきた時間が入っているので、変えることでこれまでの積み重ねをこぼしてしまうこともあります。
そっけないくらいシンプルなマークが強いのも、同じ理由です。造形が優れているからではなく、その形が長い時間ずっと同じ姿で、いろんな場所に出続けてきたから。派手さではなく、一貫と継続。これは、地域で選ばれ続ける会社の条件と、ほとんど同じです。
形をつくる前に、何を大事にするかを言葉にする
もちろん、器がいらないわけではありません。器がなければ注げない。見分けられること、思い出せること、積み重ねが一箇所に貯まること。ロゴにはその働きがあります。
だからこそ、つくる順番が大事です。僕らがロゴやブランディングのお手伝いをするとき、形を考える時間より、その前の時間のほうが長い。この会社は何を大事にしているのか。何をしないと決めているのか。どんなお客様に、どんな暮らしを届けたいのか。ひたすら聞いて、言葉にしていきます。そこが決まっていないと、案を並べても「なんとなく今っぽい」「社長の好み」で決まってしまい、流行が変わるたびに、また変えたくなる。
そして、この「何を大事にするか」の言葉は、ロゴのためだけのものではありません。営業トークの軸になり、現場での判断の基準になり、写真やコピーの方向を決める拠りどころになる。ロゴを新しくすること自体はゴールではなく、そこに何を注いでいくか。その注ぐものは、日々の仕事の中でつくられます。見た目を変える前に、自分たちが毎日何を注いでいるかを見てみる。遠回りに見えて、それがいちばんの近道だと思っています。



