Scroll
Journal ジャーナル
資料が揃わない会社は、書体を決めていない
2026.09.09

資料が揃わない会社は、書体を決めていない

社内で作られる資料が、部署ごとにバラバラになる。よくある悩みですが、原因はたいてい意識の低さではありません。決めていないだけです。

とくに文字は、決めどころが四か所しかありません。書体の数、大きさ、行間、字間。この四つを決めていない会社では、作る人ごとに違う判断が入り、結果として資料の見た目が揃いません。

揃わない資料が、ブランドに与えているもの

見た目が揃っていない資料は、受け取った側に「都度作っている会社」という印象を残します。中身の質とは別のところで、体制がないように見えてしまう。

逆に、書体と余白が全部の資料で同じ会社は、それだけで手順が整っているように見えます。提案書も、見積の説明も、採用の募集要項も、同じ顔をしている。ここは費用をかけずに作れる信頼です。

書体は二つ。決めれば、選ばなくて済む

ひとつの資料に明朝とゴシックと装飾書体が混ざると、中身が同じでも散らかって見えます。

基準は、二つまで。割り方は言語で決めます。和文用が一書体、欧文と数字用が一書体。和文書体に含まれる数字は字幅の設計が違うため、金額や日付を打つと間延びして見えます。用途で割ると、必要数は二つに落ち着きます。

弊社は日本語が游ゴシック、数字と英語がJost。表紙もグラフも注釈も、この二つだけで作ります。効果は見た目の統一だけではありません。作る人が書体を選ぶ時間がゼロになります。決めごとは、迷いを減らすために置くものです。

三つ目を足したくなるのは、たいてい強調したいときです。それは書体ではなく、大きさと行間で足ります。

大きさの下限を、社内で決める

弊社のWebの規定では、最小十二ピクセル、本文十六。二列組みなら十五、三列なら十四まで。列が増えれば一行が短くなるので、少し小さくても読めます。紙ならワードの初期設定である十・五ポイントが実質の下限です。

一枚に収めるために九ポイントまで落とす。これは収まったのではなく、読まれなくなっただけです。分量が入らないときの正しい対処は、文を削るか、二枚に分けるかのどちらかです。

配布資料では差がはっきり出ます。読む人は机に置いたまま、少し離れて見る。近づかないと読めない大きさは、中身に届く前に離脱を作ります。

いちばん変わるのは行間

四か所のうち、投資対効果が最も高いのが行間です。文字の大きさの一・八倍から二倍。十六ピクセルなら行の高さは三十ピクセル前後になります。

一・二倍では文字の壁に見え、読む前に負荷がかかります。行が空いていると、目は次の行の頭に戻れる。詰まっていると読み終わった行の下に戻り、同じ行を二度読みます。

文字の大きさを変えずに行間だけ広げても、読みやすさは変わります。外部のテンプレートを使って読みにくいときは、まずここを疑ってください。英語向けに作られたテンプレートに日本語を流すと、行が詰まって見えることがあります。

字間はゼロにしない

一文字の六パーセント。レタースペーシングで〇・〇六。見出しは〇・〇八から〇・二まで広げます。

日本語は漢字とひらがなが混ざるため、詰めると息苦しく見えます。ゼロのままだと硬い印象が残ります。

強調は一種類に絞る

太字と赤と下線を同時にかけているページは、強調が三種類あることになります。三か所が同じ強さで目立つと、読む人は優先順位を判断できません。強調は、増やすほど弱くなります。

弊社は資料に色を使わないと決め、見てほしい箇所を塗る形にしています。色を増やさなくても、視線は塗った面に向きます。

規定にして、配る

この四つは、担当者の裁量に置かず、一枚の規定にして配ってください。書体二つの名前、本文と最小の大きさ、行間の倍率、字間の値。それだけで足ります。

資料の見た目を揃える仕事は、デザイナーを増やす話ではありません。決めて、書いて、渡す。中身に手を入れずに、会社の見え方が変わる数少ない場所です。