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Journal ジャーナル
見た目の予算を削ると、何が起きるか
2026.09.04

見た目の予算を削ると、何が起きるか

予算を見直すときに、いちばん先に候補に上がるのが、見た目にかかっている費用です。サイトの作り直し、写真の撮り直し、パンフレットの刷り直し。金額がまとまっていて、止めても明日は何も困りません。

ただ、そこで見ているのは返ってくるまでの速さであって、返ってくる量ではありません。すぐに困らないものほど、長い時間をかけて静かに働いていることのほうが多いです。

経費として見るか、投資として見るか

ここで結論が分かれます。

支出を一枚の表にまとめて眺めると、どれも同じ「出ていくお金」に見えます。そう見えているあいだは、少ないほうがいい、という判断しか出てきません。

厄介なのは、その判断が短期的には正しく見えることです。今月の数字は改善します。困りごとが表に出るのは半年後や一年後で、そのころには、どれを止めたせいなのかを誰も追えなくなっています。

分ける物差しは、来年も残るかどうか

家賃も電気代も通信費も、使ったら消えます。来年には残っていません。

一方で、撮ってもらった写真、作ったサイト、書き溜めた記事は、来年も残って働いてくれます。同じ金額でも、性質がまったく違います。

この分け方をしておかないと、締めるときに、締めてはいけないほうを締めます。

見え方は、仕事の中身の推測に使われている

もうひとつ、見た目の予算について書いておきたいことがあります。

これは僕らがデザインを仕事にしているから言うのではありません。一般論としての話です。デザインがちゃんとしていないと、この会社は仕事もちゃんとしてくれないのではないか。そういう推測をされることがあります。

店舗でも同じです。お客様を招き入れる場所が、傷んだままだったとします。こちらとしては、そこに手が回っていないだけです。でも、来た人からすると、この会社は本気じゃないのかもしれない、という印象になることがあります。

こちらの事情は、相手には見えません。見えているものだけで判断されます。それが公平かどうかは別として、実際にそう働きます。

優先順位は、目に触れる回数で決める

とはいえ、全部にお金をかけられる会社のほうが少ないと思います。だから順番をつけます。

基準はひとつで、お客様の目に何回触れるかです。

看板、名刺、サイトの最初の画面。ここは毎日、誰かが見ています。一方、社内で使う道具や資料は、多少地味でも仕事は進みます。見ているのは自分たちだけです。

うちも、最初から全部にかけられたわけではありませんでした。お客様が見るところから直して、社内のことは後回しにしました。

削る順番も、同じ物差しで

締めるときは、この順番をそのまま裏返します。手をつけるのは、社内で完結しているところからです。

ここを逆にすると、数字をつくっていた側を、数字が落ちている月に止めることになります。翌月はさらに苦しくなり、また同じ判断を繰り返す。この回り方に入ってしまうと、抜けるのに一年かかります。

効果が出なかったときの見方

作り直したのに問い合わせが増えなかった、ということはあります。

そこで「やはり見た目にお金をかけても意味がない」という結論にしてしまうと、次から何もできなくなります。

見るところを変えたほうがいいと思っています。増えたかどうかではなく、それがいまも残って働いているかどうか。写真は来年も再来年も使えます。名刺にも、資料にも、採用のページにも回せます。効果が遅いだけ、ということもあります。

ただし、何年経っても何も起きないなら、そのときは置き場所のほうを疑います。作ったものが悪いのか、置いてある場所が悪いのか。順番としては、後者から見ます。

それでも最初に置くなら

最後にひとつ。もし、いちばん最初にどこへ投資するかと聞かれたら、僕は知ってもらうことのほうだと答えます。

看板もサイトも、見てもらえなければ働きません。整えるより手前に、届ける経路をつくる話があります。作ったものが働くかどうかは、その経路があるかどうかで決まってしまうので。