
作った日が、ゴールになっていないか
ブランディングのご相談をいただくとき、ときどき気になることがあります。ロゴができる日や、サイトが公開される日が、いつのまにか目的の位置に置かれていることです。
作ることが目的になると、できた日がゴールになります。実際には、できた日が最初の日です。
順番が入れ替わると、力の入れどころがずれる
僕は二十三歳のときに、自分の店を始めました。
そのときに、あとから振り返ってよかったと思っていることがあります。独立を目的にしていなかったことです。
独立したいから独立した、ではありませんでした。商売そのものが面白くてやっていたら、その先に独立という選択肢が出てきた。そういう順番でした。
もし目的が独立そのものだったら、店を開けた日で満足してしまっていたと思います。開店の日は、たしかにいちばん高揚する日です。準備してきたものが形になり、人が来て、写真も撮ります。
でも、その日の売上で店が続くわけではありません。続くかどうかは、その次の日からの千日で決まります。
ブランディングでも、同じことが起きます
ロゴが決まる日、サイトが公開される日、会社案内が刷り上がる日。どれも気持ちのいい日だと思います。関係者が集まって、見せ合って、いいものができましたね、と言い合う。
問題は、そこで終わってしまう場合があることです。
できたものが世に出て、誰かがそれを見て、何かを思って、動く。ブランドとして意味が出てくるのは、たぶんここからです。作った日というのは、その手前にある準備の最終日にすぎません。
それでも作った日がゴールになりやすいのは、そこだけが目に見えて終わるからだと思います。ロゴは完成します。サイトは公開されます。一方、伝わっているかどうかは、いつまでも完成しません。
見分け方
作ることが目的になっているかどうかは、その場の会話に出てきます。
公開日の話ばかりが決まっていて、公開したあと三か月で何をするかが誰の担当にもなっていないとき。これはだいたい、そうなっています。
あるいは、完成物の良し悪しの基準が「気に入るかどうか」だけになっているとき。これも同じです。誰に何が伝わればよかったのかが決まっていれば、好みとは別の物差しが出てくるはずなので。
置き直すときの順番
やり方としては、作るものを決める前に、できたあとの最初の三か月に、誰が何をするかを先に決めておくのがいいと思っています。
誰に見てもらうのか、どこに置くのか、渡す場面はどこか。それを先に決めておくと、作るものの仕様のほうも変わってきます。渡す場面が展示会なら、会社案内の一枚目に載せるものは変わりますよね。
順番としては、こうです。誰に届けたいかを決める。届く場面を決める。その場面で必要なものを作る。ロゴやサイトは、この三番目に来ます。
逆から始めると、できたあとに「これをどう使いましょうか」という相談が発生します。この相談が出てきたら、順番が逆だったということだと思います。
作らない、という話ではありません
誤解のないように書いておくと、ロゴもサイトも要らない、という話ではありません。僕らはそれを作る仕事をしています。
言いたいのは、置く場所の話です。作ることは目的ではなく、届けるための手段のひとつです。手段として置いておけば、作ったあとも手が動きます。目的にしてしまうと、そこで止まります。
店を開けた日が最初の日だったのと、たぶん同じことなのだと思っています。



